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黒猫亭 [おはなし]

例えばこんな時に、黒猫亭に灯りがともります。

「あ、あそこに家がある。少しでも休ませてもらえるといいのだが。ともかく行ってみるか」

旅する人が幾日も道に迷って疲れはてた時。
日もくれ心細くなって辺りを見回すと、ふっと、遠くに灯りが見えます。

もうくたくたになった体の、最後の力を振り絞ってたどり着いたのが”黒猫亭”と書かれた小さな家です。

戸をあけると、
「いらっしゃいませ」
赤い前掛けをした小さな黒猫が、前足をきちんと揃え、お行儀よく座って出迎えます。

「どうぞこちらへ」
誰もが一瞬、人間でなかったことにびっくりしますが
でも黒猫は悪い猫には見えませんし
それより何より、体を休められることがありがたいと思いました。

旅人の前を歩く黒猫が案内した場所は、小さなお部屋にベッドが一つ。

綺麗に整えられたお部屋はあたたかで、
黒猫の用意してくれた温かなお茶を飲むと、
寒い中を歩いてきた旅人は、ひとごこちついてほっとします。

「では、おやすみなさい」
それを見た黒猫はそう言って、また前足をきちんと揃えて小さくお辞儀をし、戸を閉めました。


翌朝、旅人はすっかりとは言わないまでも、元気を取り戻して目がさめました。
このぶんなら今日はまた旅を続けられそうな気がします。

側に寝ていた黒猫が起き上がって、背伸びをしました。

「昨日の黒猫はお前さんかい?」
「にゃあ」
「昨日はたしかに人間の言葉を喋ったのに」
黒猫は何も言わず、尻尾をピンと立て、旅人に擦り寄ってから、ゆっくりと歩いて行きました。


黒猫亭の灯りは、体や心のくたびれた人が、一晩の宿を借りたい時にだけつきます。
もしそんな時があったら、森のなかに小さな灯りをさがしてみてください。
きっと、黒猫が待ってます。

多分、風がしらせるのでしょう。
猫は鼻がききますから。

DSC05145s.jpg
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neko

tabbycatさん、こんなサボりのブログをいつも読んでくださってありがと~!です。
by neko (2016-05-25 20:57) 

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